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読者の心を掴む小説の書き方「書き出しパターン4選」

  • 書き方講座
  • 2016.09.12

約 2323

読者の心を掴む文章を書く上で大切なのは「書き出し」です。読者が目にする一番最初の部分に関心を引き寄せることで、その後も読み進めてもらうことが出来るからです。

心を掴む書き出しと言われて、みなさんは何を思い浮かべますか?
今まで読んだ本の中で、思わず見入ってしまった書き出しはなんでしょうか?
今回は、それらをパターン化してまとめたものを紹介していきます。上手く書けずに悩んでいる方は、ぜひ参考にされてください。

 

自己紹介や著者の体験談をひと言で書く

書き出しで著者の人柄や体験談を書くことにより、読者に対して「どんな人がこの本を書いているのか」「これからどんな話が始まるのか」といった関心を引くことが出来ます。
これは夏目漱石が上手に使いこなしていた書き方です。まずは以下の例文を読んでみてください。

 

『吾輩は猫である』の書き出し
吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

『坊っちゃん』の書き出し
親譲の無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。

 

いかがでしょうか?
特に『吾輩は猫である』は、いったい何が始まるんだ?と思わせる興味深い書き出しです。何を言っているのか、読者の常識では見当がつかないほどの表現ではなく、かと言って何が起きるのかも分からない。先が読みたくなってしまう上手な書き方です。

 

目に見える情景をひと言で書く

次は、小説やエッセイなどでよく見かける最もポピュラーな書き出しです。まずは以下の例文、竹久夢二が著した書き出しを読んでみましょう。

 

『都の眼』の書き出し
留吉は稲田の畦に腰かけて遠い山を見ていました。いつも留吉の考えることでありましたが、あの山の向うに、留吉が長いこと行って見たいと思っている都があるのでした。

『大きな蝙蝠傘』の書き出し
それはたいそう大きな蝙蝠傘でした。幹子は、この頃田舎の方から新しくこちらの学校へ入ってきた新入生でした。

『日輪草』の書き出し
三宅坂の水揚ポンプのわきに、一本の日輪草が咲いていました。

 

以上のとおり、まず著者や主人公目線で見た情景を書き出していることが分かります。これが小説であれば、読者に物語の舞台や状況を理解してもらう上で役立ちますし、詩やエッセイであれば、情景を思い浮かべてから本文に入ってもらうことができます。
何れも作品への“入り”をスムーズにする役割を担っており、読者はストレスなく読み進めることが出来るでしょう。
 
(出典:すべて『青空文庫』

 

著者や登場人物の意見・感想から書き出す

「私は○○だと思う」「昔、○○だと思っていたことがあった」など著者や登場人物の意見・感想から始まるのは、小説やエッセイ、評論でよく見られる書き出しのパターンです。
 
与謝野晶子・著『階級闘争の彼方へ』の書き出しは、このパターンで始まります。
 
人類が連帯責任の中に協力して文化主義の生活を建設し、その生活の福祉に均霑することが、人生の最高唯一の理想であると私は信じています。
文化生活が或程度の成熟期に入れば、そこには個人の能力に適する正当な社会的分業の生活があるばかりで(以下略)
(出典:青空文庫「階級闘争の彼方へ」 )
 
評論作品はどうしても課題の背景や状況説明、物事の立証などに文章量を要するため、長々とした文章になりがちです。これでは読者は飽きてしまいますから、上記のようにまずは結論(=著者の考え)を書くことで文章にメリハリをつけましょう。
 
魯迅・著『明日』は著者ではなく、登場人物のセリフから始まります。
 
「声がしない。――小さいのがどうかしたんだな」
 赤鼻の老拱は老酒の碗を手に取って、そういいながら顔を隣の方に向けて唇を尖らせた。
 藍皮阿五は酒碗を下に置き、平手で老拱の脊骨をいやというほどドヤシつけ、何か意味ありげのことをがやがや喋舌って(以下略)
(出典:青空文庫「明日」 )
 
小説であれば、このような始まり方で良さそうです。
 

モノローグやセリフから始めることで、長い説明を省略

また、近年話題の作品ジャンル、ライトノベルでも同じ書き出しが見られます。語り手や登場人物の意見をモノローグやセリフにして書き出しているのです。
 
第21回電撃小説大賞 大賞受賞作、鳩見すた・著『ひとつ海のパラスアテナ』は、
 
『地球は青かった』
 ビフォアの時代、ソビエト連邦の宇宙飛行士だったユーリ・ガガーリンの発言は、いくつかの意訳を経てそんな風に世間に伝わった。
 当時の埃った地面やコンクリートの森に住んでいた人々は、その言葉に大いなるロマンを覚えたという。
(出典:出典:株式会社KADOKAWA「電撃大賞」 )
 
このような書き出しをしています。
作品独自の世界観や登場人物の説明などから入るよりも、まずは意見(モノローグやセリフ)から入ることで、
「どんな話が始まるんだろう?」「このキャラクターはどんな人物なんだろう?」といった読者の想像力を掻き立てることができます。長い説明も省略できて一石二鳥ですね。
 
今も昔も、著者や主人公の意見・感想から書き出すことは、様々なジャンルに応用できる便利な方法です。ぜひ覚えておいてください。


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