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自分史・自叙伝を書いてみたい人のための「初心者向け自分史・自叙伝書き方講座」

  • 書き方講座
  • 2016.09.12

約 2840

初心者向け自分史・自叙伝書き方講座

自分史や自叙伝を書いてみたいけれど、文章の書き方が全く分からないという初心者の方。実は『作文』を書くことで、自分史・自叙伝の執筆トレーニングができることをご存知でしょうか。

小・中学校では誰もが書いたことのある作文ですが、大人になると書く機会はほとんどありません。しかし、作文には自分史・自叙伝を書く上で役立つポイントがいくつも隠されているのです。

そこで今回は、作文を参考に自分史・自叙伝の書き方を鍛える方法をお伝えしていきます。
 
 

●自分史・自叙伝を書く前に、まずは「真似したい」と思える見本探しから

旧来、「学ぶこと」と「真似ること」は同義語であると言われてきました。それは文章を書くことも例外ではありません。良い自分史・自叙伝を書く人は、たくさんの良い文章を読んで真似て練習し、その上で自分らしい文章表現を確立しています。

ですから書き方が分からない初心者の方は、自分が「面白い」「真似したい」と思える文章を見つけましょう。本でも新聞のコラムでも、どんな形の文章でも構いませんが、文章構成がしっかりしていて、なおかつ気軽に読める文章量という点では作文がおすすめです。

 
 

●魅力的な自分史・自叙伝を書く3つのポイント

では実際に、ある作文を題材にして文章の書き方を学んでいきましょう。

まずは以下を読んでみてください。
《第65回》文部科学大臣賞作品「夢の跡」
 
 

いかがでしたか?
 
こちらは、第65回全国小・中学校作文コンクールの文部科学大臣賞作品です。実際には原稿用紙80枚にわたる長編で、上記のサイトに掲載されているものは要約です。

とても衝撃的な内容だったと思います。「父が、逮捕された。」で始まり、著者の鋭い観察力と、それを惜しみなく伝える筆力。講評にも、「満場一致、最高得点で授賞が決定した」とあるように、コンクール内では圧倒的に優れた作品だったようです。

さて、著者の筆力についてはさておき、この作文からは自分史・自叙伝の書き方を鍛える上で重要なポイントが隠されています。
それは以下3つ。
 

・他の誰もが体験したことの無いような、“個人的な体験談”が書かれている
・その体験をきっかけに得た“気づき”について書かれている
・その体験や気付きを社会の“普遍性”に結び付けようとしている

 
なぜこれらがポイントになるのかは、それぞれ分割してみていきましょう。

 
 

●他の誰もが体験したことの無いような、“個人的な体験談”が書かれている

作文は著者の個人的な体験を書くものですが、本来、他人の経験など読者にとっては退屈なものです。想像してみてください。
有名人などでもない限り、自分史・自叙伝で特に興味のない個人的な日常話が文頭に出てきたら、それだけで読む気を失ってしまうのではないでしょうか。

そうした時に、「あっ、すごい」「何なんだろう」と思わせる、読者が体験したことのない希少価値のある出来事が書かれていたら、気になって読み進めてしまうはずです。個人的な体験談でも、“誰も経験したことの無い”体験に限っては、読者にとっては魅力的に映るものです。

もちろん、上記の作文のように「父が逮捕された」出来事なんて早々身に起きないものですから、何も波乱万丈の人生や、奇跡的な出来事を書く必要はありません。普段の日常生活の中から、著者にとって「特別だ」と感じられる出来事を書きましょう。

著者独自の着眼点で体験したことを書けば、それだけで「他の誰もが体験したことの無いような、希少価値のある“個人的な体験談”」になります。

 
 

●その体験をきっかけに得た“気づき”について書かれている

気付きを書くということは、著者の人柄を伝え、「面白い考え方をするなあ」「魅力的な人だ」と感じてもらう。いわば作品の個性を伝えるためのアピールポイントになります。
一見誰にでも起こりうる出来事でも、著者がそれをどう受け止め、解釈し、学び取っているのか。気づきを書く中で伝えることができれば読者は、「そんなこと考えもしなかった」「自分にはない着眼点を持っている」など興味を惹かれるものです。

 

ですから、自分史・自叙伝には体験談をつらつらと書き続けるのではなく、何かの出来事について書いた際は、その都度得た“気づき”についても書きましょう。

 
 

●個人的な体験や気付きを、社会の“普遍性”に結び付けようとしている

最後はこちら。なぜ個人的な体験や気づきを、普遍的な物事に結び付けなければならないのでしょうか。それでは著者の個性が文章からなくなってしまうのでは…と思うかもしれません。
 
しかし、どれだけ特別な体験や著者独自の気づきを自分史・自叙伝に書いたとしても、それだけで終わってしまってはただの“自己満足”です。その個人的な出来事が、社会とどう関わっているのか。社会の普遍性とどう結びつくのか。
一般的な人に共通する常識や概念で理解できるよう、考え方の足並みを揃えてあげることで、読者から “共感”を得る自分史・自叙伝が完成します。
 
例えば参考にした作文では、「父親が逮捕された」という個人的な話で始まりますが、最後には「両親や家族を選ぶことはできない。しかし、私はここに生まれてきたことを感謝したい」「家族への信頼や愛情は、当たり前すぎて見えないが(中略)どうやって自分たちを守ろうとするかで、くっきり、はっきり感じることができる」といった、家族の信頼関係や愛情などの普遍的なテーマに結び付けています。
 
読者にとって家族が逮捕される事は非日常的な話ですが、家族との絆は人間の普遍的なテーマですから、「自分が同じ状況になったら、逮捕された家族に感謝できるのだろうか?」「家族からの愛情を、当たり前のように思っていないか?」と自分事のように考えることが出来ます。
 
このように、個人的な体験や気付きを著者の自己満足で終わらせず、どれだけ読者にとって自分事と捉えてもらうか、一緒に考えてもらえるかで、自分史・自叙伝の魅力が大きく変わるのです。

 

 

以上、作文を参考に、文章の書き方のポイントを紹介しました。まずはこれら3つのポイントを押さえ、実体験を元にした簡単な作文を書いてみましょう。
 
人生のターニングポイントとなったような、自身にとって印象深い体験を1つ選び、「個人的な体験」「体験をきっかけに得た気づき」「それらが社会の普遍性とどう結びつくのか」の3つを先に書き出します。それから詳細を肉付けしていくとスムーズですから、ぜひチャレンジしてみてくださいね。


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