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本を出すにはまず書き方を知ろう「小説の書き方講座」

  • 書き方講座
  • 2016.09.12

約 5459

本コラムでは、自分で書いた本を出してみたいけれど、小説を書いた経験がないまったくの初心者の方向けに、書き方講座をお届けしていきます。

 

本を出す前に「何を伝える小説なのか」を決めましょう

本を出すにも何も書けない。予備知識もない。そんなまっさらな状態から初めて小説を書く人は、最初に何を書き出しますか?
物語の舞台や登場するキャラクター、場面ごとの5W1H(※)を思い浮かべるかもしれませんが、それだけでは不十分です。

5W1Hとは「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」という6つの要素をまとめた、情報伝達のポイントのこと。

小説は作者であるあなたの心の中、あなた自身をさらけ出すことが重要です。
本を出すからには、カッコイイ出来上がりでないといやだ…。読者に叩かれるのが怖い…。という羞恥心を捨てなければなりません。
さらけ出すことで小説に独自の世界観や個性が生まれ、他の小説とは違う魅力を放ちます。
たとえば、小説を通じて世の中への感謝の気持ちを伝えたいのか、人間関係の理不尽さに対する怒りを伝えたいのか。
そして、小説を読んだ読者にそれをどう読み取ってほしいのか、どんな気持ちになってほしいのかを考えましょう。

 

本を出すことで「何を伝えたいのか」「どうなってほしいのか」を明らかにすることが、小説を書く上での第一歩となるのです。

 

 

本を出す前にしっかりと追求したい「小説のテーマ」

小説を書くとき、あなたはどのような『テーマ』を構想しますか?
小説を執筆する上で、作品の方向性を決めるテーマ選びは非常に重要です。よりスムーズに、ブレずに執筆するために必要な、作品の主軸となる要素だからです。
次は小説のテーマとはどのように考え選ぶべきなのか。他の作家と差をつけるためには、どんな工夫ができるのかを解説していきます。

 

● 小説に必要なのは普遍的なテーマ
誰も思いつかない奇想天外なものや、人々の想像をはるかに超えた未知なる領域をテーマにしたもの…。
本を出したい人は、こうしたひと目につくテーマを選びがちですが、小説のテーマは「普遍的なもの」でなくてはなりません。

 

小説を読んだ読者が、自分に深く関係のあることや、今後起こりうることが小説の中に含まれていると感じることで、作品に対して共感や好意、反感といった感情が生まれるからです。逆に、先述したような誰にもあてはまらない奇想天外なテーマを選んでしまうと、読者から何の感情も持たれない、興味関心を引かない小説になってしまいます。

 

そうならないためにも、本を出したい人はまず普遍的なテーマを知っておく必要がありますね。
まずは以下を参考にしてみてください。

親子の愛情
男女の恋
友情
過去・未来
人への感謝
喜び
人への恨み
憎しみ
戦争・死

以上は一例ですが、これらに共通して言えるのは「人間の普遍的なテーマである」ということです。
あなたが本を出すとしたら、小説を書くとしたら、どのテーマが当てはまりますか。

 

● 小説は普遍的なテーマの中で、どこまでオリジナリティを出せるかが勝負
普遍的なテーマの小説にしてしまっては、他の作家の作品と被ってしまうのでは?作品のオリジナリティが無くなるのでは?
と考えるかもしれませんが、オリジナリティとは、普遍的なテーマの先に見えてくるものです。

例えば、今話題の小説を参考に、男女の恋愛をテーマにした場合について考えてみましょう。
恋愛小説『植物図鑑』が累計80万部超えのベストセラーとなり、2016年には映画化も決定しているライトノベル作家の有川浩さんをご存知でしょうか。
『植物図鑑』は主人公のOLと青年の恋愛模様を書いた作品で、突然現れた青年により日常生活が一転する…という始まりです。
有川さんがライトノベル作家としてデビューしたこともあってか、文芸書よりも軽いタッチで書かれているのが特徴です。

 

また、累計600万部以上の大ベストセラーであり、テレビアニメ・映画・ドラマ・実写化などを果たした『図書館戦争』は、
架空の世界を描いたSF小説として知られていますが、同時に恋愛小説としての要素も多分に含まれた作品で、恋愛ものとしても知られています。

 

このように「男女の恋愛」という普遍的なテーマであっても、ライトノベルのような作風、日常生活の一転、SFの世界観を加える…といった工夫で、オリジナリティが増してきます。
独自の世界観が特に際立っている有川さんの作品は、「有川ワールド」として親しまれています。

ですから、まずは普遍的なテーマをひとつ選び、そこにあなたらしいオリジナリティ溢れる要素を加えてみましょう。
本を出したい人はこの作業をしておくと、自分が書く小説に自信が持てますし、ネタ出しもしやすくなるのではないでしょうか。

 

 

小説の基本は誰が読んでも「分かりやすい」こと

本を出す上で絶対に覚えておいてほしい執筆の基本は、すべてを「分かりやすい」ものにすること。これに尽きます。
キャラクター、ストーリー、文章表現、いずれも分かりやすくすることで、読者は小説の内容について納得し、スムーズに読み進められるからです。
あなたが小説を読んでいても、キャラクターが覚えられない、ストーリーの展開が早くてついていけない…といったことはないでしょうか。
それは、小説の各要素について納得できていないからです。きちんと納得し落とし込むことができれば、小説の内容を覚えておくことができるはずです。
このような問題点を回避するには、書き進めていく過程で書き終えた箇所を読み返したり、書評をもらったりすることで防止できます。
誰が読んでも分かりやすい作品になっているか、厳しい目で見る必要があります。

 

 

小説のキャラクターの構想は、「一人の人間としてイメージできる」まで考えてみる

小説の原稿をサクサク書き進められる著者は、「話を書き進めるうちに、自然とキャラクター(登場人物)が動いてくれた」とよく言います。
これは作者が心の中で、無意識に自身と小説のキャラクターが会話をしている状態なのかもしれません。キャラクターの構想が明確になっていて、そこにストーリーを与えると、キャラクターが構想どおりの動きをして小説の物語を進めてくれる。そんなイメージでしょうか。

 

このように、スムーズに小説を書き進めることは難しいですが、物語の登場キャラクターはどんな人物なのかを理解しておくことは大切です。本を出したい人は、小説を書き始める前にまず登場キャラクターの履歴書を作ってみると良いでしょう。
性別、年齢、長所、短所、好きなもの、嫌いなもの、信念……挙げればきりがありませんが、一人の人間としてイメージできるくらいには考えてみましょう。

 

 

小説のキャラクターのセリフが「著者の言葉」になっていませんか

本を出したい人にありがちな失敗例として、小説に登場するキャラクターが著者の考えを代弁しているケースがあります。
しかし、小説は「あなたの心の中、あなた自身をさらけ出すこと」であるのだから、
キャラクターの台詞が著者の考えを代弁していても良いのでは?と思うかもしれませんが、
それでは当初構想したキャラクター設定からずれてしまいます。

 

また読者にとっても、小説を読み進めるうちに、キャラクターから作者の自我が垣間見えてしまっては不自然に思うでしょう。
もちろん、小説を書いていくうちにキャラクターが固まってくることもありますが、
時には振り返って「本当にキャラクター自身の言葉になっているか」を考える必要がありそうです。

 

 

小説を書くときは人称の基本を押さえる

小説の地の文章(セリフ以外の文章)をどの視点で描くのかによって、使われる人称が変わります。
大きくは一人称か三人称に別れますが、一冊の小説の中では、決めた人称で最初から最後まで書くことが基本となります。

 

〈一人称〉
「僕は」「私は」など登場人物の一人が語り部となり、語り部の主観で文章が作られます。
小説は語り部が主人公であることが多いですが、必ずしも主人公でなければらないということではありません。
小説は語り部の視点で語られるため、語り部の言葉や心情をそのまま地の文章にできますが、
語り部が知らないこと、見えていないことを小説に書くことはできません。
夏目漱石の『吾輩は猫である』はまさに一人称の作品です。「吾輩」という猫の視点で物語が語られています。

 

〈三人称〉
現在多くの小説は、三人称の「神視点」と「一元視点」で書かれています。
「神視点」の小説にも完全に客観的に書かれるものと、「神」として物語中の全ての出来事、心情を把握したものの二種類があります。
前者の「神視点」では、小説内に登場人物の心情を描くことはなく、客観的な事象のみで文章を構成します。
このタイプの小説は、読者に登場人物の心情を読み取らせることが難しく、最も困難な人称かもしれません。

 

次に後者の「神視点」では、神は作中の出来事を全て知っていることになるため、作中のどのような出来事も描くことができます。
三人称「一元視点」とは、ワンシーンだけ、または各シーンごとに登場人物の視点で地の文章を構成する小説です。
主語は私、僕ではなく登場人物の名前などになり、一人称のように描くことができますので、比較的登場人物の心情を描きやすい小説といえます。
ただし、複数の登場人物の視点が入り混じるようでは読みにくい小説となってしまいます。

 

小説を書く際に人称の決定は基本中の基本ですが、書いているうちに特定の登場人物に感情が入りすぎてしまうなどの理由で、
気づかないうちに途中で変わってしまうこともあります。地の文章を書く際は注意が必要です。

 

 

あなたの小説、セリフで物語を進めていませんか

小説を書く際、地の文章を書くことは難しいと思われる方が多いかもしれません。
特にライトノベルなどの本を出したい人は、ついつい地の文章ではなく、セリフで物語を進めてしまうことがあります。
しかし、地の文章は心情、風景、登場人物の状態、説明など多岐にわたる役割があります。
また、セリフにはない「物語を進める力」を持っています。セリフを補完することが役割ではなく、
読者を物語に引き込むには、練られた(情報がスムーズに入る)地の文章が必要なのです。

 

また、セリフとのバランスにも注意しましょう。人は人の話をずっと聞いていることはできません。
人の話を長時間聞いていると、結果的に何を言いたかったのか整理してほしくなることがあると思います。
これは小説でも同様で、長短に関わらず、連続したセリフは読んでいて分かりにくくなる傾向があります。
何ページにもわたってセリフが続くと、読者が小説の世界観を理解しないまま物語が進んでしまう怖れもありますから、注意が必要です。

 

本を出したい人にとって、小説を書き終えた後の充実感は想像以上だと思いますが、
少し時間をおいて、誰が読んでもわかりやすい内容になっているか、小説の内容を再度チェックしてみましょう。

 

 

「手垢にまみれた」表現をしていませんか

小説がある程度書きあがったら、タイトルや帯文などを考えてみる機会もあると思います。そんなときあなたは、「手垢にまみれた表現」を使っていませんか?
本を出したい、本が好きでいろいろと研究している、といった人が引っかかりやすい罠です。
手垢にまみれた表現とは、多くの著者が小説に使用してきたことで「使い古されてしまった表現」のこと。
誰もがイメージできる分かりやすい表現であると同時に、新鮮さに欠けてしまうというリスクがあります。
編集者は小説の帯文などを作る際、必ずこれに気を付けています。

 

本を出す前に注意したい宣伝文の書き方
日々たくさんの小説が発表されているなかで、似たような宣伝文というのは必ず出てきてしまいます。
例えば「感涙」という言葉があります。これは、「深く感じて流す涙。感激・感謝のあまり流す涙」という意味で、感動小説などにうってつけの言葉です。
しかし、「感涙!○○な物語」「日本中の感涙を読んだ~」といった形で繰り返し使われてきた言葉でもあるため、
すでに刊行されている別の小説の作風をイメージされてしまう可能性があります。

 

そのため、手垢にまみれた表現を避けインパクトのある言葉を選ぶには、

・分かりやすいこと
・想像をかきたてること
・イメージを限定させないこと
・その作品だけのオリジナリティを出すこと

以上を満たしていることが理想です。
執筆、文章の編集・校正、カバーデザイン、帯文の作成など、あなたの小説が完成するその時まで、表現をとことん追求してみて下さい。


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