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雪だるま

香織


約 974

僕は柴犬、風連。今日は朝から雪が降っていた。夕方の散歩の時間になっても雪は止まなかった。だけど、僕は何時ものように香織ちゃんに散歩の催促をする。リビングのガラス戸をバリバリ前足で引っ掻いて、 「フィーン、フィーン」


と甘えた声を出せば、ほーらね? 香織ちゃんは急いで上着を羽織り、散歩の準備を始めた。

外は一面の銀世界だった。香織ちゃんの腿の高さまで雪が積もっている。もちろん道路は除雪してあるから、普通に歩けるけど。それにしても、雪って好きだなあ! 真っ白でフワフワしてるし、雨と違って毛皮が濡れないし。僕は先頭に立って、香織ちゃんをグイグイ引っ張りながら進んだ。

途中で人家も疎らな、周りが雪原の小道に差し掛かると、僕は勢い良く雪原へダイブした。雪を掻き分けて、ラッセル! ラッセル! 僕は寝転んで、雪に体を擦り付ける。楽しいな。ワクワクするよ!
「風連~。ちょっと待ってよ。あんたは四つ足だから良いけど、私は二本脚なのよ。埋まっちゃう」
そうだった。香織ちゃんの事を忘れていた。てへへ。僕は小道に戻って大人しく道なりに歩く事にした。雪原を強風が吹き抜ける。僕のキリリと巻いてあった尻尾は風に煽られて横倒しになった。

一軒の家の前まで来て、僕は固まった。庭先に化け物が居る! そいつは白くて大きな奴で、赤い細長い布切れを首に巻いていた。僕は低く唸りながら奴を観察した。ビュウッと風が巻いて、布切れがバタバタはためいた。僕はドキーンとなって、思わず
「ウウー、ワンワン!」
と吠えたてた。何としてもこの化け物から香織ちゃんを守らないと。化け物は僕の威嚇に怖じ気づいたのか、じっと動かない。僕は軽くフットワークを効かせて、そいつを牽制した。
「……風連、何やってるの?あれは雪だるまだよ」
香織ちゃんが笑いながら綱を引っ張った。
「雪だるま? って何だろう?」
僕は多分とても怪訝そうな顔をしていたと思う。
「あのね、風連、雪だるまは雪を集めて作った人形よ。怖いこと無いのよ」
そうなのか。人形か。ビックリしたなあ。でも何だって人間はこんな物作るんだろうか? 疑問は残るがともかく、僕は一つ賢くなった。