作品一覧
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南会津が教えてくれたこと福島コンテスト入賞作品
D.Y地下鉄有楽町線の「銀座一丁目」で下車、地上に出て早朝の銀座を50ℓのザックを背負ったまま闊歩し、地下鉄銀座線の「京橋」から「浅草」までまたしばし地下に潜る。浅草駅で地上に上がり、始点から終点までの特急[ 続きを読む ]
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父との思い出福島コンテスト入賞作品
N.T朝、会社の社長室のブラインドを開けて、私の1日がスタートする あたたかな朝陽がこぼれるように部屋に差し込んでくる 私は福島市土湯温泉で30数年を過ごした 車で土湯温泉の坂を下りると、2つ[ 続きを読む ]
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SAYONARA FUKUSHIMA福島コンテスト入賞作品
K.I「この街に愛着も湧かないし何の未練も無い。」と彼女はつぶやいた。その寂しそうな横顔がしばらくの間、頭から離れなかった。 信夫山は福島市の中央に南北を分断する状態で鎮座する、周囲7km程の[ 続きを読む ]
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空の向こうに第一回小説コンテスト入賞作品
鈴木和音プロローグ 昼間は暑さで陽炎すら立ち上るアスファルトも、夜になるとすっかり冷え切って、昼の暑さが嘘のように感じられる。むしろ、ちょっと風が強い日は長袖を一枚羽織りたくなるときすらある。 仙台駅の地[ 続きを読む ]
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スーパーマン 第一回小説コンテスト入賞作品
宮本水月(1) その街には〈怪物屋敷〉と呼ばれる、古くて、不気味なたたずまいの洋館があった。 屋敷の門や壁には蔦がびっしりと生え、庭には得体の知れない植物がうっそうと生い茂っている。 かなり以前から、この家[ 続きを読む ]
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天下への契り 第一回小説コンテスト入賞作品
袖岡 徹一 弘治二年(一五五六)五月—— 篠つく雨のなか、数人の小姓を従えたひとりの騎馬武者が街道を駆け抜けていく。 六尺近くの大躯を持ち、豊かな顎髭を蓄えたいかつい面構えは、荒武者と呼ぶに相応しい風貌で[ 続きを読む ]
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小さな街のストーリー
Y.K東京から岩手に移り住んで、間もなく9年目を迎える。 11月を引越しの日と決めたのは、冬の寒さをまず体験して、覚悟を深くするためだった。 当たり前のように見られるダイヤモンドダストに感動し、目玉が凍みる[ 続きを読む ]
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風土は語る
I.S北海道の帯広から岩手県を訪ねてみたいと思ったのは、三陸海岸にある大槌町浪板の丘に立つ、「風の電話」を創った男に会ってみたいと思ったからである。 大槌町は、東日本大震災で壊滅的な被害を受け、人口の10%[ 続きを読む ]
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落ち葉とノラ・ジョーンズ
D.Y私がflyfishingという渓流釣りに出会ったのは5年前。ちょうど職場の人間関係に疲れていた時期に、関連会社から出向してきた男性と会社を出るタイミングが一緒になって、なんとなく飲みに行ったのが始まり[ 続きを読む ]
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車椅子の男
S.Y日本の伝統芸能である落語を人前でしゃべることを生業にしている私ではあるが、趣味は洋楽を中心としたロック鑑賞。おかげで音楽業界で数多くの知己を得た。中には暴力的なイメージが強いパンクロックなる音楽を三十[ 続きを読む ]
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蕪島の朝
M.N貯金箱が小銭でいっぱいになったので、蕪嶋神社再建の募金に行くことにした。三月十二日。数年前の、津波が襲って来たあの日の翌日にあたる朝だった。 津波は石段で留まり、蕪島神社の社殿は被害を免れた。八戸市民[ 続きを読む ]
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青森エッセイ
K.T青森。青森県。青森市。そう言えば一度ならず二度ほど青森県にはお世話になっていた。 ひとつはカウンセリングで。もう一つは仕事で。二度目は八戸だったが、あれも青森県に間違いはない。 青森市に行った時、正直[ 続きを読む ]
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「タイムリップ」
K.Aお腹の膨れが目立つ若い女が泉谷の駅から住宅街の中を通り抜けて私の家に向かってっくる。よく見るとその女は大学時代親しくしていた真知子だ。夢なのか現実なのか?私は夢の中で考えていた。 モー[ 続きを読む ]
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『母』との出会い
H.Aそれは、私が教会に通い始めて3か月目の事だった。 毎週日曜日、家から歩いて15分……当時、私は教会に夢中だった。 その日の礼拝中、私はいつものように、牧師さんの話を聞いていた。 すると、牧師さんは私た[ 続きを読む ]
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デイサービス継続勤務5年3か月経し
M.U僕は、現在、70歳。今勤務するデイサービスに5年3か月継続して介護の仕事をし続けている。 僕は、65歳で、このデイサービスに雇用された。このデイサービスが創立されたのが、僕が雇用された前年の7月で、[ 続きを読む ]
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富士山、綿100%
M.M富士山を見に山梨まで行った。私が住む新潟県からは、渋滞だったことも合わせて五時間くらい掛かった。 父の運転で、車に乗っているだけの私は呑気なものだ。でもずっと座っているのも案外大変なのだ。渋滞に入っ[ 続きを読む ]
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お得な夏祭り能代七夕
K.K毎年8月は家内の実家に帰省する。実家は秋田県の能代市にある。能代市役所の近くなので、地元ではビジネス街である。能代は、東京に比べて湿気が少ないので過ごしやすく、夏はとにかく青い空が抜群にキレイだ。 東[ 続きを読む ]
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快適だった青森での単身赴任生活
Y.G人生初めての単身赴任は、平成18年4月、青森市でスタートした。 期間は、平成20年3月末までの2年間だ。 当時、娘二人が東京で学生寮生活していて、その仕送り、学費等で給料は半分以上消えていた。そう[ 続きを読む ]
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屈強な男達の闘い
T.I小学生の頃からプロレスが好きである。私自身、争うことそのものは好きではないが、鍛え抜かれた強靭な肉体の持ち主同士の闘いは、安心して楽しく観られるのだ。 よく観に行く会場に後楽園ホールというところがある[ 続きを読む ]
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おんなの町
T.Oしっとりとした暗がりの土間にしつらえられたテーブルセットに腰かけて、真夏の陽光が差し込む日本庭園の中庭を眺めていると、その陰影の鮮烈なコントラストで、お屋敷の内は一面モノクロームの世界になっていた。[ 続きを読む ]
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美しの我が故郷、八戸
A.K八戸の夏はとても短い。7月下旬頃のようやく梅雨があけてからお盆までの間に真夏日が何日あるかだ。ヤマセが多い年なら夏は本当に貴重なものとなる。冬、雪は少ないが、顔を突き刺し、耳がちぎれそうになるほど風は[ 続きを読む ]
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母と私の紡ぎ旅
M.S「濃昼ってなんて何て読むか分かる?」 私たちが乗るバスの行き先を見て母が言う。 あーまたか。あー今年も言ったよ。 「ごきびる、って読むの。」 もう何回も聞いたし。しつこいって。私がうんざりすることが墓[ 続きを読む ]
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小さな街のストーリー 北海道編
H.B私はシニアになった時の生活スタイルを、還暦前から思い描いていたかもしれない。それは夫が仕事をリタイした後、冬はニュージランドの、夏は北海道の小さな街で1,2か月暮らそう!そして共通の趣味であるカメラで[ 続きを読む ]
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椅子に刻まれた時間
N.O私が函館の街を初めて訪れたのは17歳。ようやく冬の寒さが緩み始めた3月だった。ガタゴトと走る路面電車や、異国情緒のある街並み、朝市の活気や、潮の香り、外人墓地の外れの丘から見下ろす黄金に輝く海を行くシ[ 続きを読む ]
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夜のナポリタン
J.T3年前の9月、すすきのにあるサン・ローゼが閉店になるという噂を聞いた。そこは会社勤めの頃、ときどき立ち寄った店で、狭い階段を降りると昭和のにおいのするレトロな雰囲気のある喫茶店である。 今思えばオレ[ 続きを読む ]
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「道産子」
S.M「○○君は鹿児島生まれなんですよ」何度かお酒の席で先輩から言われ知人が驚かれることがある。「いえいえ、本籍が鹿児島なんです」このくだりが嫌いではない。 両親は鹿児島出身。姉は室蘭、兄は出産の為に鹿児島[ 続きを読む ]
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虹の生まれる里
隼人1 橘恭平は、スタジオに入るなりセットが気に入らなかった。 恭平は、日本を代表するテレビコマーシャル界の奇才である。 42歳・・・演出家として一番脂が乗っているはずの年齢・・・しかし、世界のクリエイタ[ 続きを読む ]
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短編集 1,スーパーエリート 2,パラレルワールド 3,自由 4,宝くじ 5,遠い恋人
夢原夜星スーパーエリート 世界は広い。どこにどんな凄い人物がいるか判らない。 凄い人物、と一言でいっても内容は種々様々である。疲れを知らぬバイタリティーの持主、メカニックな理知の持主、百桁の数字を一瞬で暗記し[ 続きを読む ]
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映画のようなニューヨークの恋物語
隼人1 「そろそろ式場を決めないと、もう間に合わなくなっちゃうからさ・・・明日にでも会って打合せしないか。」 「任せるってば・・・私は、どこでもいいよ、友達が集まれるところなら・・・だから悟[ 続きを読む ]
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囲碁宅急便
庵名路久都会の街外れ、明日にでも取り壊されそうなほど年季の入ったビルの一角で「囲碁宅急便」と書かれた張り紙がドアにへばりつき木枯らしとともに揺れている。普通の宅急便取扱所と混同されないためか「高[ 続きを読む ]
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レンズの向こう側のまめ博士
宇里香菜「こっち向いて」 幼稚園に通っていた幼い私が写る、このモノクロ写真は、何気無い⼀⽇の⼀瞬をそのまま優しく包み込んでくれている。 当時、先⽣や友達、そしてお⽗さ[ 続きを読む ]
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生命(いのち)のはじまり
菅睦雄この物語は、生殖医学を基本的に学び、その不思議さ、神秘さを知り共有したいと思う願いから語ってみたいと思います。貴方自身、その声でお子さんのために、またお孫さんのために優しく語ってあげたい『生命(いのち[ 続きを読む ]
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【書評】早川タダノリ/『「日本スゴイ」のディストピア』
橋本浩【嫌韓本と日本礼賛本の氾濫】 嫌韓や愛国心高揚を掲げた日本を自画自賛する新書等が、本屋の目立つ場所に平積みされ始めたのはいつ頃からだろうか。現政権を担う内閣総理大臣、安倍晋三首相が「美し[ 続きを読む ]
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あ うん
楓林神様のおぼしめし 「天は二物を与えず」など全く当てはまらない人がいる。 ひょっとしたら神様がいて・・・・・・と、考えてしまいます。 どこまでも真っ青な空を見上げた時に、真っ白い真綿のよう[ 続きを読む ]
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ばあちゃんのたまご酒
浅野マリ子1985年11月11日、私は数日前から喉の痛みと悪寒を抱えながら、ショルダーには常備薬のバイエルのアスピリン一箱を忍ばせての厳しい出張となった。 車窓からの景色が、だんだんと色彩豊かになっていくのを、[ 続きを読む ]
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天気予報
夢原夜星暑くて長い八月の一週間がようやく終わり、俊樹は妻の待つ家路を急いだ。 『明日から土日を入れて9日間の休暇だ。予定していた北海道旅行にいよいよ行ける』 俊樹は初めて行く夏の北海道旅行を楽しみに、汗だ[ 続きを読む ]