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小さな街のストーリー     北海道編    

H.B


約 1692

私はシニアになった時の生活スタイルを、還暦前から思い描いていたかもしれない。それは夫が仕事をリタイした後、冬はニュージランドの、夏は北海道の小さな街で1,2か月暮らそう!そして共通の趣味であるカメラで自然を撮りたいと思っていた。我が家には2人の息子が巣立った後、その穴を埋めてくれるワンコが2匹いた。ワンコを連れての海外生活は難しいこと、資金の面でも実現は遠かった。夫が64歳で完全リタイァするのを待って夏の北海道生活を実現させました。

2011年の7月の終わりの日、車に自転車2台、パソコン、カメラ、レンズ、望遠鏡、ワンコの生活に必要なものを積み込み、下北半島の大間町で一泊、北海道に入り新得町で一泊して鶴居村に到着しました。8月いっぱいスティすることになったログハウスは乳牛が500頭余りいるムトーウファームの牛舎の端にありました。鶴居村は日本の美しい村に選ばれている素敵な酪農地帯です。ムトーファームは街の中心から車で10分ぐらいのところにあり、裏の牧草地には丹頂鶴が舞い降り、夕方には鹿の群れが遊びにきました。ログハウスにワンコ2匹と暮らしながら、釧路湿原、知床半島など道東のネイチャーフィールドを歩き回り広大な風景を写真に撮る至福の時でした。ムトーファームでBBQの仲間に入れてもらい、そして鶴居村のカフェレストラン・ハートンツリーのオーナー夫妻と仲良くなっていただき、パン作りなどを体験させてもらった。鶴居村の夏祭りに参加して仮装大会、花火などともに楽しませてもらい、半分村民になれたようでうれしかった。

2回目の北海道シーズンスティは2012年、道北の中頓別に8月お世話になりました。町から車で20分ぐらい離れた敏音知キャンプ場にログハウスはありました。ここには天北線廃線跡地があり、道の駅があり、そして美しい雄姿の敏音知岳登山道が続いています。林に囲まれ、ヤマゲラ、アカゲラ、エゾリスが顔を出すログハウス暮らしはのんびりした時間が流れ、夫は鳥の写真を撮りに歩き回り、私はハウスで本を読む贅沢な暮らしでした。中頓別役場のスタッフの方々、町の何でも食べさせてくれる食堂のおじさんおばさんなど町民の方は皆さん親切でした。利尻礼文島、サロベツ原野、オホーツクの海など道北の自然に魅了されたスティでした。

3回目は2013年の夏、北海道のへそと呼ばれる富良野で、旧教員住宅を借りました。ここは町の中心からだいぶ離れていたので町の方との交流はあまりありませんでしたが、夏祭りに参加して、地域の生活の様子を見せてもらえたように思います。富良野の生活は旭岳のお花畑、風のガーデン、千年の森、紫竹ガーデン、六花の森など美しいガーデンファームに夢中になって写真を撮りました。そして富良野の美味しい野菜、メロンを楽しんだのも思い出深いスティでした。

そして2015年は4回目の北海道で7,8月の2か月を道西の江差で、役場が借り上げた民間の住居に暮らしました。
この時はワンコの1匹が5月に逝ってしまったので2人と1匹の暮らしとなりました。
江差町に滞在して、これまでの北海道の大自然を楽しむ暮らしとは違って、北海道の歴史を再認識する機会でもありました。
北前交易で栄えた江差のいにしえ街道に残る旧中村住宅は江戸時代の海産物仲買商人として繁栄を極めたようです。そして姥神大神宮渡御祭りが行われた3日間は、町民として楽しませてもらい、他では味わえない貴重な体験でした。
海鮮問屋関川商店の親切なオーナー夫婦、よく買いに行ったパン屋さんなど、私には故郷のような街になりました。
何度も散歩した、夕日の美しい鴎島は私に心の安らぎを与えてくれました。

鶴居村、中頓別、富良野、江差の町での暮らしは、通りすがりの旅では味わえない豊かな思い出を残してくれました。
そして今年の夏は中標津、赤平の街で夏を過ごす予定でいます。今まではいつも一緒に暮らしてくれたワンコたち、もう1匹も昨年逝ってしまいました。
寂しいけど、ダイちゃん、ミキちゃん、2人で行ってくるからね。写真をもって行くから、一緒に行こうね。