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お得な夏祭り能代七夕

K.K


約 2049

毎年8月は家内の実家に帰省する。実家は秋田県の能代市にある。能代市役所の近くなので、地元ではビジネス街である。能代は、東京に比べて湿気が少ないので過ごしやすく、夏はとにかく青い空が抜群にキレイだ。
東京からは新幹線で秋田まで行き、在来線に乗り換えておよそ1時間。この1時間は観光列車の「リゾートしらかみ」に乗りたいので、接続の良い新幹線を選ぶようにしている。このパターンだと東京を10時20分に出発し、能代には15時過ぎの到着となる。移動で一日終わった感じになるが、列車の旅を満喫出来るので、これも楽しみである。
能代駅からはタクシーに乗って10分かからずに実家に到着する。散歩がてら20分くらいブラブラしながら歩いて行くのもいいのだが、それよりも炎天下を歩くのが辛く、こちらが上回る。車窓からのシャッター通りは、昨年と何も変わっていない。都会のように店舗の入れ替えなど全くなく、ただただシャッターが下りている。毎年日本のバランスの悪さを感じる瞬間である。東京の賑わいを少し切り取って持って来たいと思うが、同時に意味が無いと感じ、気分が下がる。能代駅から続くメイン通りは、車の往来こそがあるが、歩道を歩く人がいない。これも毎年見る風景で、もはやメイン通りとは呼べない。

さて、昨年まではお盆を挟んでの帰省だったが、今年はお盆のラッシュを避けたかったので、休みを8月初旬に変更した。特に意識した訳ではなかったが、これにより8月3日、4日開催の「能代七夕」を観ることが出来た。能代七夕自体は、江戸時代から続くお祭りだが、巨大灯籠が出る今日のスタイルは5年前から始まった。地域振興策として企画され、今後観光の目玉として期待されている。その気合の現れのひとつが‘電柱、電線の地下化’である。会場となる国道101号線の約600mの区間は、空中を走る電線がない。道路上にも電線がない。巨大な灯籠を通すために整備したのだ。見上げた場所に電線が無いことは、何とも気持ちがいい。カメラを構えて電線が入ってしまうと、がっかりするが、ここではそれがないのだ。それは全て能代七夕のため、巨大灯籠のためなのだ。本当に凄い。
その能代七夕の目玉は、何と言っても巨大な灯籠である。青森県五所川原の「立佞武多」の高さを上回る灯籠は、現在日本一の高さを誇る。全国的には未だ知られていないが、‘日本一’なのである。「愛季(ちかすえ)」と名付けられた灯籠がそれで、高さは24.1m。下から見上げると首が痛くなる高さである。もう一基の「嘉六(かろく)」は17.6m。そして、これより小ぶりな灯籠が何基も続き、祭りを盛り上げる。全ての灯籠は、中からライトアップされる。元々街灯が少ないということも手伝って、その迫力と美しさに圧倒された。
開催5年目の発展途上のお祭りなので、観る側も余裕を持って楽しめる。通路が人でいっぱいで身動きが取れないような状態ではないので、ゆっくり歩きながら、また気が向いたところで立ち止まって観ることが出来る。この気持ちの余裕が、凄く得をした気分になるのだろう。お祭りの見物はこうありたいと思う。 
能代が熱帯夜になるのは、お盆前後のほんの数日で、8月初旬の夜は気温22~24度で非常に快適。お囃子をBGMに地元ならではの露店に立ち寄り、美味しいものを片手に観る巨大灯籠は本当に美しい。近くから「エレクトリカルパレードみたい!」と言う声が聞こえたが、こういった日本の祭りがモデルになったのかも知れない。
巨大灯籠群は、それぞれ参加者に引かれて、会場内をゆっくりと時間をかけて往復する。途中、会場中央で止まり、見物客が近くに寄って観ることが出来る時間が設けられている。‘ふれあいタイム’と名付けらたこの時間は、見物客もテンションが上がる。写真や映像を撮るにも絶好の機会なので、それぞれが今年の夏の思い出を残していた。
18時30分に市役所横の広場から出発した巨大灯籠は、21時に再び市役所に戻って来る。20人から30人の男たちに引かれた灯籠は、合図と共に起用に方向転換をする。もちろん、引手全員がタイミングを合わせなければ出来ないので、ここも見所の一つである。道路上で何度か切り返しをして、無事に広場に戻ると、会場は急に静かになった。それまでのお囃子も終わり、会場内のアナウンスもなくなり、見物客の声だけになる。その見物客も足早に帰って行く。会場は、本部席辺りを残して、あっという間に街灯の少ない薄暗い街に戻ってしまった。このメリハリも良しとしよう。

東北の夏の祭りと言えば、秋田の竿灯、青森のねぶた祭りが全国的に有名だ。共に8月初旬に開催され、期間中に何十万人も動員する。観る方も大変なお祭りである。それこそ気持ちに余裕がない状況だ。秋田竿灯、能代七夕、青森ねぶたは、ほぼ同時期の開催なので、上手く梯子して楽しめる旅行ツアーがあれば流行ると思う。そしてツアー参加者は、能代七夕で、得した気分を是非味わって欲しい。