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青森エッセイ

K.T


約 1783

青森。青森県。青森市。そう言えば一度ならず二度ほど青森県にはお世話になっていた。
ひとつはカウンセリングで。もう一つは仕事で。二度目は八戸だったが、あれも青森県に間違いはない。
青森市に行った時、正直私はもっと田舎田舎しているのかと思っていたがそうではなかった。すごく都会で驚いた。当時私は遠野市に住んでいて、遠野から青森まで何とかお金をかけずに行きたかったので、四号線をひたすら青森を目指した。十和田の辺りで道に迷い、結局有料道路を使う羽目になったが、八甲田山をぐるりと迂回しているその道の傍にはまだ雪が多く残っていた。あれは五月だったか。もしかしたら四月だったかもしれない。
雪が解けて、もう雪は降らないだろうという時期を狙い向かったのだから。八甲田山を通るとき、これがあの有名な八甲田山かと感慨深くなりゆっくり見まわしてみたかったが、そんな時間の余裕も心の余裕もなかった。ただ通り過ぎただけだった。
青森までの道のりは遠かった。朝五時に家を出たのにもかかわらず、約束の三時を超えてしまったのだ。確か三十分ぐらい遅刻したと思う。長い道のりをようやくたどり着き、フラフラになりながらカウンセリングを受けた記憶が甦る。今度来るときは高速道路を使おうとその時心に決めた。事実帰りは高速道路を使い三時間ほどでたどり着いた。何だこんなに早く着くんじゃないかと拍子抜けしたのも懐かしい記憶だ。
 
そんなに昔ではないはずが、自分ではもうずっと前のことになっている。でも国道をひたすら走ったあの思い出は大切なものとなっている。よく行けたと思う。途中、青森で有名な遺跡を横目に今度はここに来ようと考え、いつ来られるかもわからない再度の訪問の予定などを立てていた。以来全く青森には行けていない。
もう一つ、青森には有名なリンゴ農家さんがいる。その育て方を私はある雑誌で知り、一度お会いしたいとずっと思っているが未だにその夢は実現していない。ただ、雑誌やネットでその方のことを頻繁に見る機会があり、自分の中であった気でいるのが不思議でならない。岩手に住む私にはリンゴの畑は見慣れているのだが、青森のそれとは全く違う気がしている。いつか私もああいう畑で果樹を育てたいと思うようになった。自給自足でいいから、自然の中で実のなる木を育ててみたいと思ったのだった。
八戸に行ったときは仕事だった。青森市ではないが青森県ではある。ここに行く時も朝早かった。五時前には家を出た。冬だったからものすごく寒かった。第一走っている車の中が寒くて、窓が凍っていた。そんな馬鹿なと思ったものだ。岩手に住んでいる私は、東北の寒さは似たようなものだと思っていたが、青森県の寒さは岩手の比ではなかった。ここがこれだけ寒いのだから北海道はもっと寒いのだろうなと、そんな馬鹿げた考えが頭に浮かんだりした。第一走っていてエンジンもかかり熱くなっているはずの暖房が全く効かないなんて、この車故障しているのではないかなどと疑ったりもした。元は暖かい西の方面から岩手に越してきたから寒さには免疫がない。岩手に住んで七年ぐらいになっていたが、青森の寒さは未知のものだった。だからエンジンのかかっている、暖房を利かせている車内の窓が凍るなどと思いもしなかった。逆にそれが却って楽しかったりした。
近年温暖化で雪が少ないなどと言われているが、なんのまだまだ青森の冬は厳しいと実感した。その時に知り合った青森の方に、雪の山が二メートルにもなったと聞き、青森県おそるべし侮れんなどと思ったものだった。地吹雪ツアーに出たいと言った私に、地元の人たちは一斉に笑った。その後延々と地吹雪についてレクチャーされた。それが予想以上に面白かった。そうして益々私は青森の魅力を知って行ったのだ。
 
春から冬までをじっくり堪能したいと思う。春先ブナの山の雪解けを見て、五月にはリンゴの花を見て、夏にはねぶたを見て秋には色づく山々を見て、冬は地吹雪を堪能する。
次回訪れるならこんなふうに四季と土地を感じてみたいものである。
しかし、ほんのお隣の県なのにいつでも行けると思うと中々行かないのが人間で、でもいつか近いうちにゆっくりと津軽の、青森の四季を堪能したいと思っている。日にちをかけて。じっくりと急がずに。