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座敷牢に咲く華

柊真 麻嗣


約 872

【貴女が眠る棺に血に濡れた様な深紅の花を降らす。深紅の花弁に埋もれた貴女は、妖艶でいて儚い様をより一層引き立て死して尚、私を狂おしい程に魅了する———】

 

「お姉様・・・やっと、私のモノになりましたね・・・」
真っ白な棺に眠る同じ顔の少女の頬を愛おしそうに撫でる漆黒の着物を着た少女。少女を見つめる彼女の瞳には、永久に眠る少女しか映っていない。

 

ある大きなお屋敷に、可愛らしい双子の女の子が誕生した。何処へ行くのも、何をするにも一緒で、とても仲睦まじい姉妹であった。
しかし、彼女達は二人だけの世界を持ち、誰も寄せ付けなった。その異様さに周りの人々は恐れ、二人を引き剥がそうとそれぞれに見合い話等を持って来るのだった。しかし、彼女等は、虫螻を払う様に一切相手をしなかった。しかし、毎日の様に見合い話を持って来られる日々に彼女達は鬱々としていた。
雲一つ無く、暖かい日差しが降り注ぐそんなある日、
「ねぇ、桂華・・・私を殺してくれる?」
双子の片割れ、姉の銀華は桂華の耳元でそっと囁いた。桂華は大きな目を一際大きく見開いた。そして、うっとりした顔で
「ええ、勿論ですわ。」
「貴女なら、きっとそう言ってくれると思っていたわ。」
硝子細工を触るかの様に優しく、愛おしく桂華の頬を撫でる。そして、毒薬が入った小瓶を桂華へ渡した。桂華は毒薬を口に含み、銀華の唇へそっと自分の唇を寄せ、口付けた。
薄暗く静まり返った部屋の中で、こくりと喉を鳴らす音がやけに鮮明に聞こえた。そして、一人の命の花が散った。

 

双子の姉を宝物を扱うかの様に抱きかかえ、真っ白に塗られた桐の棺桶の中へ横たわらせた。そして、何時までも愛おしそうに棺へ横たわる姉を見つめている姿を見た、屋敷の者達は忌み子だと慌てふためいて、彼女等を座敷牢へと幽閉した。

 

陽の光が差すことが無い薄暗い座敷牢に少女達、二人ぼっち。桂華は、永久に眠る銀華へ真っ赤な曼珠沙華の花を一つ一つ丁寧に手向けてゆく。
「お姉様・・・私が想うのは貴女だけ・・・」