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将棋で身につく思考

村木多津男


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☆将棋思考法。日常に役立つこと。

 

◎イメージと言葉の思考の融合・バランスのよさ

将棋は、映像による思考と言葉による思考の融合で挑むものだ。高校で全国優勝した大村和隆君は中学の時、英単語を文字のイメージとして頭に浮かべ写真を撮るように覚えていると言っていた。視覚と言語の連合で考えていく。左脳はシンボル操作・論理・逐次。右脳はパターン・直観。

左脳、右脳、両方バランスよく訓練できるのが将棋だ。イメージと言語で思考できると思考が豊かになる。本を読みながらイメージが浮かぶと読書も豊かになる。

 

◎テーマ、ひらめきの素、編集。応用・条件に合うもの

アイデアは、①課題(テーマ・問題)、②ⅰひらめきの素、ⅱ編集、でできる。

 

●自ら問いと答えを見つける力がいる。

◎正しいポイントを読む。テーマ、課題、軸、ビジョンを持ち労力を振り向ける。ポイントにテーマ設定する。

◎広く考え大切な所、面白い所に焦点を当てる。

◎必要な時に必要なものを思考回路に載せる。

 

佐藤紳哉六段が震災の年の、東日本大会の懇親会の時、「女流の棋士から、紳哉先生は角、桂だと言われたので『かっけい』だと思ったら頭が薄いとのことだ」と自虐ねたを披露した。私は「ユーモアを研究しています」とあいさつに行ったら「どれくらいパターンがあるのですか?」「百二十位あります」「では、ここでねたをやってください」「では、今日考えたやつ、二人でやります。『日本の食べ物の中でいちばん人気があるのは? ヒント、「う」で始まって「ん」で終わる』『ウラン』『うどんだよ、お前は原子炉か!!』 これを金井恒太五段(当時の段位)と二人で即興でやっていただいた。

この時、プロ棋士はテーマの焦点の当て方がうまいのだと感じた。話が面白くなるところにテーマを設定している。

 

●ⅰ多くの事例やパターンを知り、ⅱいろいろアイデアを出す。複数の問いから答えを複数出し条件に合うものを選出する

 

◎パターンとよく使う情況を把握すること、パターンを情況に応じて使う。パターンを網羅している必要がある。

ユーモアあふれる会話、文章はパターンを情況に応じて使うことで生まれる。英作文も情況にふさわしい文型と内容を選ぶことで生まれる。パターンを網羅し情況とともに知っておくことが大切だ。でも、ユーモアは型通りだと面白くない。型の外し方のパターンを身につけなければならない。

私の電子書籍「将棋思考法」もいろいろなパターンを言語化してリスト化している。この文章では、日常に役立つことをまとめている。

 

◎うまい組み合わせを考え抜く。とらわれを消して読みをつなぎ換える。結びつきを変えることでいろいろな新しいものが生まれる。同じように見えても理にかなった新しい組み合わせを考え抜くのだ。

◎決定打、決め手を放つ。きれいなフィニッシュ。鋭さ。理にかなっている。うまくできている。パズルを解く。複数の課題を同時に解決するやり方を見つける、いろいろな利点がある。一挙両得の効率的思考ができるようになる。

合理的、効率的やり方、知恵をいろいろ身につけていると快適で文化的な暮らしができる。

 

○粘り強さと鋭さの融合。決め手はすぱっとひらめく時と思考の試行錯誤による粘りにより浮かぶ。いいアイデアは鋭さと粘り強さから生まれる。

覚えることはなるべく一度で覚えるという工夫が必要だが、アイデアを生みだすには、粘り強さが求められる。いろいろ試すことで、世界が豊かになっていく。

 

◎狙いを持つ。目的や意味のある手を探す。種をまく。ポイントをあげるなど方向性のある思考をする。「なんとなく」に理屈を考え言語化すると直観が磨かれる。

◎着眼大局着手小局。大きな方針と目の前の局面での情況への対応とをうまく整合性をつける。

 

○機に応じて定跡を用いる・この条件なら成立。工夫すれば成立。暗記だけではなく、情況に応じることを考える。あるプロ棋士のお子さんが小学校五年生の時「将棋は暗記だ」と言っていた。彼に勝った後で「違う」と私は言った。彼は後に奨励会に入ったがプロにはなれなかった。

機をとらえる・逃さない。チャンスは常にある。何気ない局面でもスキはある。チャンスを逃したら悲観せず別のアイデアをひねり出す。悪くなる前に考える。とりあ

ずの手の前にチャンス、危機を考える。

○他の可能性を考える。手拍子に指さず手が湧き出るのを待つ。ひらめいて意識化・候補にする。足りない部分の穴を埋めていく。他の可能性をリストアップ。勝負所で選択肢を増やす。ひらめきが湧くのを待つ。アイデアが浮かばなければうまくいかない。全ての駒に注意を向けることが大切だ。一つの駒ばかり見ない。一手での変化を意識。 前の読みを打ち消して確認する。粘り強さ、あきらめない、可能性を信じることだ。

 

○未来を想定する能力。未来の局面を想定して論理的にふさわしいものだけを選び出していく。危機を察知し将来に備える。

静岡県では、中小企業が八割、そのうち、七割が赤字だ。五件起業があると三十件廃業している。億単位の倒産も増えている。金融機関の負担も大きい。軍事費は経済規模に相応でなければならない。産業が弱く軍事費を拡大させる北朝鮮のようにならないためには、中小企業の活性化が大切だ。集団に慣れさせる教育は大企業の人材には必要かもしれないが、多くは中小企業に就職する。起業する人が育たなければ、デフレはさらに進み、経済は破綻し福祉も崩壊する。今何も手を打たないと日本の北朝鮮化は必然だ。

大人にはいろいろな事情があるだろうけれど、福島の子供たちは疎開させて三十年後に故郷にもどるようにさせるリーダーシップが求められる。今も強い放射線が出ている。戦時中の政府のほうがこの点はまともだった。人口減少の中、受け入れたい自治体は多いだろう。

日本は地震、津波、原発事故で甚大な被害を受けた。さらに、地震、火山の活動期に入っている。日本は外国を支援するような国ではない。それでもシリアに金を出すのは美談だが、金を持っている国に支援する余裕はない。支援を受けることを考えたほうがいいくらいだ。中国の政治家が「二十二世紀には地図上に日本という国はない」と言った。今の政治の混迷は日本国がなくなるくらいの危機である。今の政府に反対しても、みんなが国を愛し、国について考えないと日本という国はなくなってしまう。政府の敵は反対意見を言う人ではなく、無関心な人々だという度量が昔の政権党にはあった気がするのだが・・・。

今、宇宙のチリの層に入っている。専門家もどうなるのかわからないと考えている。これから、ひんぱんに、流れ星、火球、隕石が衝突する。「君の名は」は、何かを予見している。地表の七割は海なので津波には注意しなければならない。人類の危機に戦争をしているひまはないのだ。杞憂に終わればいいのだけれど・・・。

技術革新は仕事を奪うが個人にチャンスをもたらす。レジ打ちはICタグでいらなくなる。しかし、技術を持った人にアイデアがあれば、大企業とも戦える。法務、経理、技術者、アイデアのある人、デザイナーのタッグを組めば、起業ができる。アイデアがあり日本を救いたい人は相棒を見つけて世の中に名乗り出てほしい。

 

◎いろいろな基準の中で総合的に判断をしていちばん大切なことを見抜く。物量、働き、スピード、確実さなどの価値のうち今最も大切な基準を決断する。論理的に必然的な手順を選び出す。勘は「なんとなく」を言語化することで磨かれる。

動かす駒を何か所か当たりをつけて手順の組み合わせを比較検討する。全部選択肢を読むのが人工知能、当たりをつけるのが人間。将来よくなるのであれば、先に損してもよい。損をしたくないという気持ちが大きな損失につながることは多い。欲張り過ぎずに妥協し大切な価値だけを守り抜く。

◎評価をし比較、論理的、直観的に自分で結論を出す。

自分で結論に責任を持つ。今は東大出の学者の言うことを信じたら殺される。自分の身を守るには、自分で合理的に考えて結論を出せなければならない。

 

◎正確さ。大雑把にならない。丁寧に場合分けをして評価をして選んでいく。羽生さんは「思い浮かぶ手の九割はこちらが悪くなる手」と言っている。都合のいい考え方が独りよがりになる。理にかなった手は少ないのが当たり前と考えて正しく読むことが大切だ。微差が後に影響、後後にいろいろな効果のある手を探す。紛らわしい中で最もふさわしいものを選び出す。微差の違いを理解する。条件は連動している。悪い連鎖は好循環に改善する知恵がいる。いろいろな組合わせの中でペストバランスを選ぶ。

 

◎アップデート、進化。過去の成功失敗にとらわれない。常識は進化していく。昔の常識は変化の時代には役立たない。過去の成功は研究が加えられ覆され、古いアイデアも新しい構想で見直されることがある。

ワープロは役に立たなくなった。しかし、紙芝居も焼き直せば今の世の中でも有益なツールの一つだ。常識の盲点に陥らないようにしなければならない。

 

◎世界を広める。将棋だけではなく、広くいろいろなアイデアや考え方を身につける。アイデアが浮かぶ人は世界が広い人が多い。狭い世界に閉じこもると偏った思考に陥りやすい。日々出会うことで柔軟性に富んだ思考を身につける。世界の多様さに気づくと実り多い人生を築くことができる。ゲイを受け入れる土壌のところから進歩的なアイデアが生まれる。自分と違うから拒否するのは世界を狭める。

ちびまる子ちゃんのように、日常から何か面白いことを感じ取る感受性も大切だ。日常生活が面白い人が豊かな人生を送れる。身近なことから何かをつかみ取る感性も世界を広めることには大切だ。「気づく力は世界を広げ人生を豊かに築く」のだ。

 

○環境づくり。結果につながる情報入手の仕組みを作る。情報は整理し情況に応じて使えるようにする。そのためには、ハイレベルの環境に身を置くことだ。強い人、筋のいい人と対戦する、また、参考にする。感想戦などは、大切な勉強の場となる。自分とは違う見方を感じ取れるからだ。ネットで「手っ取り早く頭がよくなる方法は何か」というのがあった。「頭のいい人と付き合う」というのはその通りだと思った。脳のシナプスはピラミッドに石を一つずつ積むように少しずつつながっていく。ただ、うまい使い方は日常的な環境で養われるのだ。

 

人工知能の支援をうまく利用する。中学の全国チャンピオンになった高校生の白井君は「この棋士はボナンザ(将棋のソフト)を使って研究している」などと教えてくれた。これからは、人工知能の手がひんぱんに出てくるだろう。おそらく、三浦九段は、人工知能で最後の詰みまで研究していたので疑われたのだろう。

「ボナンザに勝ったら三百万円」というイベントで負けてきたけれど、人工知能の指し手は、形、順番がとても美しい組み合わせだった。このレベルの組み合わせを自分でも創ってみたいと人生観を変えられた。

これから、様々な分野で人工知能の支援が入り込む。うまく採り入れた人と何もしない人と差がはっきりと表れる世の中になるだろう。

 

◎多視点。歴史上の人物の視点で考えてみる。大山十五世名人だったら、どんな手を指すだろうか?

相手の立場で考える。羽生さんは、頭の中で盤面を反転させて相手の立場で考えるそうだ。

独りよがりにならないで相手の立場を考えて狙いを実現させる。自分のやりたいことは相手に応じながら達成していくのだ。将棋は相手の手に乗って指す。自力、他力を含めての実力なのだ。

 

○失敗の分析。

中学生から「後悔したことはありませんか? やり直したいことはありませんか?」と聞かれた。私は、将棋でミスを全種類書き出していることを伝えた。「ただで駒を取られた「ただ駒を取れるのに取らなかった」などすべてのミスをリストアップしている。「次に失敗しないように書き出しているから、将棋でいい成績をあげられるんだよ」と答えた。失敗とか不満の言語化は成功にとって大切なことだ。

○反省。将棋は結果がはっきり出る。日常生活ではどちらの意見が正しいのかはわからないし、自分が間違っていても能力の低い人ほど自分の意見を疑わない。日本語ボランティアのお年寄りの意見を小学生は相手にしていなかった。どちらの主張も正しいと感じたが、時代の変化の中で昔の考え方は通用しないことを痛感した。小学生はお年寄りを情報弱者と考えているのが伝わってきた。私も将来、小学生に馬鹿にされるかもしれないと怖くなった。将棋では全国レベルの小学生とやると負けることも多い。将棋では、年齢、男女、国籍、社会的地位、学歴、障害のあるなしなどの差がない世界だ。小学生にも女性にも外国人にも負けたことはある。その度に日々反省する。自分のミスと相手のミスを検討し、正しい手を探す努力をする。いろいろなアイデアを追求するのは楽しい。

私は東日本大会の団体戦の代表に八回なっている。浜松では通用してももっと上では通用しないことが客観的にわかる。自分のレベルがどの程度のものなのか客観的にわかることはとても大切なことだ。

 

○油断大敵。優勢でも楽観してはいけない。駒落ちでも最善を尽くすと大変。人工知能の駒落ちに挑むと恐ろしく粘られる。どこを攻めたらいいのか分からなくされる。ハイレベルではミスをとがめられる。

○欠点、願望列挙で対策を考える、工夫・解決策を探していく。不満を解決するには? ○○があれば、○○を渡さなければ、悪型をなくすには? 手順に先手を取るには?

 

◎ランダムと必然の筋をつなげていく。発想のジャンプとリンク。必然性と意外性の組み合わせ。発想には常識、必然的な発想法と脈絡もない突飛な発想法がいる。必然なアイデアだけではなかなか強い相手には勝てない。知恵を絞って思いもよらないことをひねり出さなければならない。

○盲点となる思考をリスト化する。例えば、相手の攻めて来る場所を攻める(歩をこちらが先に突く)、取れる駒は取る一手ではない、ただ取れる駒を取らず捨てて移動させて取る、取られる駒は逃げる一手ではない、注文に応じる、駒の位置を元に戻す。

 

○急がば回れ、小さな事を積み重ねる。一度に決めようとしない。相手が全力を尽くせば一気には崩れない。鋭い刀も分厚いものは切れない。

将棋のレベルアップもすぐにはいかない。少しずつ石を積んでピラミッドを築き上げなければならない。一喜一憂せずに今日の一勝よりもレベルアップの一生を目指すのだ。