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玉子、ガラシャになる|明智光秀と愛娘、玉子(20)

だぶんやぶんこ


約 1200

忠興は、偏執的な深い愛を玉子に抱いており大切にした。

キリスト教に対しても、身内にキリシタンも多く教会には理解を示した。

ただ、玉子が危険な目に会うことや、秀吉の政策とは違う教会への傾倒を利用され細川家に害が及ぶことを恐れた。

 

玉子は、忠興の思いを気にせず、洗礼を受けて覚悟が定まり、思う存分家中にキリシタンとしての影響力を広げていく。

忠興も玉子を抑えることは出来ないと諦め、屋敷内では、信仰を認めた。

 

忠興は、余りに熱心にキリシタンの道を突き進む玉子を見て不安になり、どうすればよいか悩み、機嫌を悪くする事が増える。

この頃から、再び、玉子と激しい喧嘩となる。

忠興は、完璧主義で引くことを知らず、自分の思いを相手に押し付ける性格だ。

些細なことにも、こだわりがあり、つい声を荒げる。

 

玉子は、繊細な神経ゆえに忠興の言動に傷つき、怒り、反発し、言い返す。

そして、険悪な雰囲気になる。

長年連れ添った夫婦であり、臨機応変その場の雰囲気に合わせ、お互いが寄り添うよう心がける時もあるが、亀裂は深くなるばかりだ。

 

忠興が、聚楽第に住まうようになると、玉子は、忠興と共に過ごすことが少なくなり、心静まる。

玉造屋敷の奥を守り、来客をもてなし、子育てに追われるが、忠興が在城しない屋敷内は静かだ。思い通りに過ごせる自由な時間ができた。

苦手だった、細川家の奥のまとめや、家中への目配りも、こなせるようになり、細川家の女主としての存在感が増していく。

 

忠興は、玉子の行動すべてに干渉した。

玉子への愛ゆえだが、自由に動けず、息苦しかった。

聚楽第の屋敷に、忠興が移ると、心身ともに、生き返った。

思う存分に、探究心を満たす学びの暮らしを始める。

キリスト教の教義を夢中になって読み、新しい知識を吸収するのは胸が高鳴る喜びだ。この感動を伝えたいと、子達にも未知なる世界を分かりやすく語る。

 

1588年、三女、多羅姫が誕生。

難産だった。

それでも無事生まれ、ほっとすると同時に「もう子は欲しくない」と思う。

生みの苦しみはもう十分味わった。終わりにしたい。

まだ25歳だが、子を生むのは終わりにすると決めた。

忠興との埋め難い考えの違いが見えたからでもある。

 

情熱の人であり、理想に生きる玉子には、現実の権力闘争に明け暮れていると思える忠興を醜く感じた。

藤の方の存在はうれしくはないが、それだけで、夫婦仲が悪くなったのではない。

忠興もキリスト教を夢中になって学ぶ玉子に反対はしなかったが、良い顔はしない。

 

細川家当主であり藩主としての忠興、母でありキリシタンの玉子。

守るべきこと責任を取ることが違っていく。

二人の間の価値観の違いが鮮明になる。

 それでも、玉子は、死を迎える1600年まで、キリシタンとして自然のまま生き、充実感を全身で感じる貴重な時を過ごす。