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教育提言

村木多津男


約 10819

脳科学と教育

☆脳の機能を把握すれば効率的に効果的に学習できる。

 

☆脳内物質
◎ノルアドレナリン。「衝動性」注意力。集中力。怒り。おびえ。不安感。緊張。
◎セロトニン。「神経質さ」幸福感。愛情。安心感。癒し。満足感。
◎ドーパミン。「外向、内向」好奇心。新しいもの好き。快感。やる気。
◎βエンドルフィン。ほっとする。落ち着く。
◎GABA。我慢。切り替え。抑制。

 

☆ドーパミンA10神経群。感情中枢。鍛えると知能障害が回復。
◎視床下部。意欲。
◎海馬回。短期記憶と学習
◎尾状核。感情。
◎側座核。愛情。
◎前頭葉。思考。
◎偏桃核。喜怒哀楽。
脳科学ブログ(教育への架け橋)
http://blog.canpan.info/brains/より

 

☆脳内物質の割合の組み合わせで個性が生まれる。脳のタイプにより学習のやり方は変わる。イギリスでは、①視覚タイプ、②聴覚タイプ、③運動タイプで学習のやり方を変えているそうだ。理解の仕方は人それぞれだ。コンビニの商品はビッグデータを人工知能がパターンを見つけ出して決める。もっと緻密で個性に応じた教育方法がこれから始まる。
知らずに損していたかも…イギリスの学校で教えられている「3つのタイプ別学習法」よりhttp://labaq.com/archives/51732331.html

 

学習
https://www.youtube.com/watch?v=3Q0eAH9RR1g&list=PLH9A-9vP2YazqvRA8rUYkt-S20Rp5BiV7
私は動画を脳のパターンを意識してつくった。脳タイプ別の理解の仕方に応じた動画づくりをしていきたい。

 

☆精神の病気は脳の機能の障害であることが分かっている。病気ではないが、一般の人の心の揺れを知るにも知識があった方がよい。それぞれは個性とも考えられる。
◎統合失調。右脳と左脳で情報が激しく行き交う。短期記憶に障害。普通の人でも衝撃的なことがあると、次から次へと目まぐるしくいろいろなことが浮かんでくることがある。そういう状態が激しいのだ。
◎自閉症。一つのことに執着する。右脳と左脳の情報の行き来が少ない。大変なことに執着したら、他のものに意識を移す必要があるが、手探りでいろいろ試してみないと思うようにはいかない。
◎双極性障害。ミトコンドリアの不活性から起きる。頭のよさを伴う。昔、躁鬱病と言った。口が回る。
◎うつ病。セロトニンの欠乏から起こる。やる気の根気がなくなる。
◎ADHD。多動。不注意。じーっとしていられない。ドーパミンが出にくい遺伝子を持っている。ちょっとでは快感を得られないので予想のつかない行動に出る。こういう子を見ているとエジソンがどうして学校から追い出されたのか実感できる。

☆同性愛。胎児の頃のホルモンバランスが崩れるとなる。

 

☆学習と記憶
◎反復すると信号が通りやすくなる。訓練。
意味のあるように繰り返す。

 

◎いろいろな経路で覚える。視覚。聴覚。口。手。触覚。嗅覚。
◎印象深くする。注意を向ける。認知される工夫。声の大きさ、トーン。リズム。間。
色の強さ、コントラスト、デザイン。動き。感情と結びつける。
◎理解しやすい。筋道立っている。うまい比喩。明快。簡潔。
◎整理して覚える数を減らす。軸で関連づける。語呂合わせ。
◎体系化。学習内容を筋道立てる。
◎関連する知識を増やす。雑学。
◎注意と集中。興味、関心。面白さ(意外な納得)。睡眠。栄養。規則的な生活リズム。

◎小まめな休憩。睡眠中、休憩中に脳細胞が整理されている。52分作業して17分休むとはかどるという実験がある。
☆思考力を高める。
◎私が将棋をやるのは、「頭のよさについて知りたい」からだ。「頭がよくなれば将棋も強くなるに違いない」一見、正しそうだが、この考え方には落とし穴があった。将棋はいろいろなことを複雑で多岐にわたり覚えなければならない。そのためには、情熱が大切だと知った。何よりも情熱が大切なのだ。
◎将棋で身につくこと。発想力。創造力。分析力。想像力。問題解決能力。直観力。筋道立てて考える論理力。違う基準を総合的に評価し判断する能力。効率的に考える力。いろいろなパターンを網羅して覚え情況に応じて活用する応用力。パターンを効率的、効果的に組み合わせる活用力。本質的に考える能力。相手の立場を考える力。忍耐力。集中力。

 

自分でたどり着ける能力

 

◎まず、重点にテーマを適切に設定し、問題を自分で考え解けるようにする。今はネットの時代。将棋の世界では高速道路で強くなってその後に渋滞が来ると言われている。情報を知れば一気に強くなる。そこを抜けだすには、発想力、創造力、緻密な思考がいる。
◎私のブログ「天才村木の勉強道場」に「覚えられました」とコメントを残していく子たちがいる。「◎○の覚え方」とか検索することを思い当たる子と気づかなかった子で差ができてしまう。世の中には知っているかいないかだけで差ができてしまうことが多い。良質な情報が行き渡れば社会は変わる。そのために、いい情報に自分でたどり着ける能力が必要なのだ。生涯学び続けることを学ぶ人が増えれば、社会は変革していくに違いない。

◎将棋では、手に入る情報は、ネットに加えて人工知能が加わる。人工知能のアドバイスの意味が分かる程度になっていることが求められる。人工知能の支援をいかに受け入れるかも大切な能力となる。しかし、最後は未知の局面を自分で何とかする能力が必要なのだ。

◎勉強は自分に合ったやり方を見つけてやった人ができ

自分の脳タイプや性格を知って、自分に合ったやり方をみつけてやれば、身になる勉強ができるにちがいない。

◎自発

1998年、ワールドカップサッカーの日本代表の選手のストレッチ体操を見ていたら驚いた。1983年、当時最新と言われた中学の時に陸上部の伏見先生に教わったものと同じことをやっていた。ワープロの技はすぐに使えなくなったことを考えると長い間役に立つことを選んで教えなければならない。私はやれと言われてやっていたけれども、代表選手たちは、ケガをしないように、体をケアするという目的意識にあふれてやっていた。

真剣な取り組みを見ることができればやる気は伝染していくだろう。

 

反復すれば覚えるという考えが無駄を生む

 

◎反復すれば覚える。しかし、無駄なものは圧倒的に忘れていく。努力は報われるという考え方は、効率的なやり方を軽視してしまう。日本語ボランティアで小学校に入ると、敬語のできない子にも、漢字を書かせることになる。ボランティアの中には「黙々と漢字を書かせていていいのだろうか」という疑念を抱く人も多い。宿題で書かせる漢字を見ていると、退屈になってくる。何か教材に工夫が足りないと思った。「漢字を面白く学びたい」と考えて、「漢字の成り立ちに興味を持たせること」「面白い文章や名言で漢字学習にしたらいい」ということに思い至った。

いい生活習慣で築いた集中力とともに一度で覚えるやり方を増やさなければならない。

 

小学校漢字覚え方

http://tensaimuraki.hamazo.tv/e7161016.html

 

◎女

田で力を出すのが「男」。男の子は女の子をどう思っている??。「好」き。
女が台で始める。女は未(いま)だ「妹」。女が市にいるのは「姉」。女は又で力を出し「努」める。米と女ノ又を「数」える。次の女の「姿」は?

◎日
日が十で「早」い。日が立つ「音」。十の日、十の月、「朝」。日をつげる寺は「時」。日が生まれる「星」。日が青く「晴」れ。日と月で「明」るい。日が音をたてる「暗」さ。日が者に「暑」い。日を召す「昭」。日が京で「景」色。日を免れ「晩」。

 

ユーモア、名言で覚える漢字
http://tensaimuraki.hamazo.tv/e6944029.html

 

赤文字を漢字にしなさい。

Ⅰイガイな言語化・コメント コメントは知覚とキオクが照合されて浮き上がってくる。
1.名前を決める ぼくの禁酒主義ぶただよ 『エーミールと60ぴきのざりがに』リンドグレーン
□テキカクでユーモラスな名前決め
2.定義○○は△である(事象を言葉のセツメイと結びつける) ヘビ・・・長すぎる『博物誌』ルナール  □言葉たち意外な見方で説明を
①意外な分類 3.アンジ 彼女は今年五十八(ということは、誰よりも、彼女自身が真っ先に承認するだろう)。『エズミに捧ぐ』サリンジャー □説明を省略してほのめかせ
4.漠然とした意味をゲンテイする 「これはヒョウショウものだ」 「最初で最後でショウ」
「私は(ドジで)強い(つもり)筋肉マン、走る(すべる)見事に(転ぶ)筋肉マン、ゴーファイト」 筋肉マンのテーマソング
□言葉尻、つけ足していき意味を変え
5.違う←同じ 「なんだい。それがドレミファかい。おまえたちには、それではドレミファも第六コウキョウ楽も同じなんだな」 『セロひきのゴーシュ』宮沢賢治
□違うもの、同じ仲間と考える
6.同等ヒカク 「わしが考えていたより、だいぶ賢い。」と王さまがいいました。「まず、ネコと同じくらいに賢い『公園のメアリー・ポピンズ』P.L.トラヴァース

 

記憶は、思い出すカギをつくるとよい。様々な語呂合わせにチャレンジした。リトマス試験紙が酸性の時、赤色に変わる。赤いサン(酸)タ、あかりさん(赤・り[リトマス紙]・酸)

 

日米修好通商条約で開港の五港の覚え方

日米修好通商条約 1858年 下二けたの58を欧米が「怖い」と覚える。「し」修好→「つ」通商「あいうえお順」になっている。

不平等条約・関税自主権がない・領事裁判権を認める。

開港した五港 横浜、神戸、函館、長崎、新潟

頭文字 「よ・こ・は・な・に」 「横は何?」

よ・・横浜 (神奈川)
こ・・神戸 (兵庫)
は・・函館 (箱館)
な・・長崎
に・・新潟

 

近現代・年号の覚え方・語呂合わせ

http://tensaimuraki.hamazo.tv/e1933896.html

 

西暦の下二桁の語呂合わせ。百年単位は流れで覚える。
1825 外国船入国[25]させぬぞ打ち払え 外国船打ち払い令

 

世界の国名と首都、暗記法、覚え方

http://tensaimuraki.hamazo.tv/e6796889.html

 

ウクライナ,キエフ,う暗いな、消えフタ
オランダ,アムステルダム,「セーター編む。捨てるダム」「おらんだ」
ギリシャ,アテネ,手紙はギリシャ宛てね
◎脳内に適切な回路をつくる

 

ニューロンが変化することで記憶や思考力が鍛錬される。適切な思考回路を脳内に築き上げなければならない。一つのものに一つを加えると線は一本引けるとすると、千個のものに一つ加えると千個の線が引ける。少しずつ石を積み重ねてピラミッドを造るように巨大なネットワークをつくらなければならない。人は変わると決心した時から変わることができる。まず、一歩を踏み出し歩み続けよう。知ること、考えることが楽しければ放っておいても調べ考えるようになる。これが習慣化されれば回路が増えていく。わくわくする知識と問いかけを見つけよう。

 

◎思考回路のモデル化→心に響く・納得・共感→スイッチ→行動

 

心に響く言葉や体験から納得、共感し、やる気のスイッチが入る。そして、学習などの行動につながる。心に響く言葉は人によりばらつきがある。脳タイプ、知識、体験などをモデル化して、分かる言葉で伝わるやり方を研究しなければならない。ネットの時代、情報は自分でたどり着ける力をつければ調べられる。やる気があれば、自分で何でもできる。知識を伝えて教えたつもりになるのではなく、やる気を出させることに先生はいちばん力を注がなければならない。脳タイプに応じたやる気の出させ方を考え積極的な人間を量産しなければならない。

 

面白さは意外な納得

 

ユーモアのパターン、笑いの本質
http://www.yomucafe.gentosha-book.com/contribution-40/

面白さは意外な納得。知らないことに「へぇー」と思えることを選んで間やリズムよく伝えなければならない。面白い素材が全てである。つなげることと発想のジャンプを組み合わせる。あるものの結びつきを変える「つなぎ換え」の訓練をするとよい。詩もそうして生まれる。

私の詩http://www.yomucafe.gentosha-book.com/contribution-11/ 

 

ロビンス小依さんから聞いた話

◎知恵の共有・普及が社会をよくする。先進的な地域は住民が賢い。アメリカのポートランドの話を聞くと、そこは教育が違う。社会科を重視する。社会に興味が持てれば自分の意見を持て国語力もあがると考えているのだ。キング牧師の日があると、幼稚園では「今、肌の色が白い人も黒い人も黄色い人もみんな一緒に過ごします。でも、そうでない時がありました。みんなが一緒に過ごせるように闘った人々がいました」という話をしてキング牧師の塗り絵をさせる。そうやって賢い市民を育てる。ファーマーズマートでは、900円のこだわりの弁当が売れている。すると、農家をやりたい若者がたくさん出てくる。ファーマーズマートでは情報の交換がなされる。いろいろな知恵が共有されていき、自助、共助の賢い社会が作られていく。

◎一方、私がボランティアで行った小学校の校長先生は、浜松の歴史のカードゲームやシリアの川柳について(私のアイデアはどのように生まれたか
http://www.yomucafe.gentosha-book.com/contribution-51/)「児童の発達に合わない内容」とコメントしたそうだ。中学ではテストで時事問題が出るのだけれども・・。

 

社会包摂と連帯

 

◎間違った信念
・人間には信念がある。自分の信じる信念に応じて行動する。相模原の犯人も間違った正義感を基に犯罪に至った。
・人間は誰も間違った信念を持っているものだ。私のいた日本語ボランティアでは、日本語の変な子供に対しても学校の要請で漢字を黙々と書かせていた。私は集中力がなくなって来ると楽しく会話をして日本語能力を向上させようとしていた。すると、ボランティアの老人が「黙れ」とどなりこんできた。子供が嫌がっているのに無理に漢字をやらせて、注意をこちらにとられてしまうのだ。彼は自分が間違っていると考えたことがないにちがいない。根性を鍛えるのが大切だ。それに耐えられないのは弱い人間なのだ。そういう考えがたくさんの落ちこぼれを生産してきたのだ。そして、間違ったエリート意識と卑屈な敗者を生んできたのだ。

◎脳科学を活かした教育を
・イギリスでは脳のタイプに分けて指導している。視覚タイプ、聴覚タイプ、運動タイプだ。今の日本では視覚タイプの者が優位に立つ。もしも、他の指導を受けていたら運命も変わっていた人も多いだろう。先生も自分と同じタイプのことは理解している。しかし、違うタイプの者には大変不適切な指導をすることがある。問題児に対して、エイリアンのような扱いをする先生がいたので、教育委員会に相談し、私は学校から嫌われボランティアを辞めるように追いやられた。

・DNAから脳内物質の分泌の割合が変わってしまう。そこから、様々な個性が生まれてくる。たとえば、ドーパミンが多すぎると統合失調に、少ないとADHDになる。知らない先生がエジソンを問題児に変えてしまう。黒柳徹子さんは校長先生から「君は本当はいい子なんだ」と言われてうれしかったそうだ。授業中に席に着かない子にそんなことを言うと図に乗るのではないかと心配になる。しかし、黒柳さんのようになるのなら、積極的な言葉を指導者は言わなければならない。

 

◎敗れた者が常識を否定して注目を浴びようとする

・弱肉強食が敗れた者に疎外感を与える。勉強ができなくても絵ができる。それだったらいい。しかし、何も取り柄のない人間はどうすればいいのだろうか。誰でも変えられるのは外見だ。相模原の事件の犯人は髪を染め、刺青をした。ヘイトスピーチで注目を浴びるのは、日本もアメリカも同じだ。犯罪の予防のために特に政治家の発言は糾弾しなければならない。ヘイトスピーチは抑圧され屈折した人間の耳には心地よく響く。犯人はヘイトスピーチ的な常識に反した考え方をして、自分を特別視して、劣等感を埋め合わせようとした。

◎弱肉強食で分断される社会
・ツイッターを見ていたら、底辺の高校で、働く高校生が「蟹工戦」を読んで「この時代は団結しているだけいい」というコメントをしたそうだ。現代は大金持ちの利益のために人々が巧妙に分断されている。「敗れたものは這い上がれ」というのが常識となっている。労働者も公務員、大企業の組合、派遣労働者と分断されている。

◎犯人は救われずモンスターになった
衆議院議長への手紙、しかも、極論を送った。この時点で彼は自分の中の悪魔を捕まえて欲しいと考えていたのだろう。こんなことをすれば、病院直行は確実だから。彼は夢破れ、福祉の手からこぼれ、矯正されずに犯罪に至った。
・勝ち組負け組という分断された狭い成功の概念が彼を絶望させ、視野を狭くさせ、間違った正義感に酔いしれて犯罪へと突き進ませた。

◎社会包摂と連帯
・まず、教育により、合理的な思考力を身につけさせることが大切だ。間違った正義感を疑える人間にしなければならない。脳科学の教育への応用が求められる。幸福と人類の進歩をみんなで目指すのだ。
・社会は互いに分断されている。マイノリティを排除するのと反対の結びつけていく「社会包摂」の社会を目指さなければならない。
・弱い者は連帯し、互いにほめあう。互いを尊重し相手の立場を考える。多角的に考えればいろいろなアイデアが生まれてくる。そして、みんながいろいろなことに有能感を持ってチャレンジできれば、文化が熟成するだろう。歪んだ差別意識よりも楽しいことは世の中にはたくさんある。勉強に加え、絵をやり、音楽をする。いろいろなことを勉強し体験する。語呂合わせを絵にしたり、音楽にしたり、ゲームにしたりする。一つのことが別の分野と結びつくと新たな可能性が広がっていく。
◎社会制度、連帯、教育、脳科学、心理学、福祉、マスメディアの追及、いろいろな観点から今度の事件をとらえることが再発防止のためには必要だ。再発防止のための究明が何よりの供養になるのではないか。

 

 

ダニエレ・アランテス・ナカシマさんの話

 

ダニエレさんは、ブラジルの日系三世、浜松など日本で働き、ドイツ人の夫と結婚して、ブラジル、日本、ドイツに住む。日本とドイツは訓練された仕事のやり方が共通、日本とブラジルは米を食べることが共通、ドイツとブラジルはおいしいビールが共通、では、三つの共通項は・・・、分かりません。でも、人間なのです。文化には、氷山のように見える部分と見えない部分があり、見えない部分を理解することが必要。麺を音を立てて食べるのは文化だと押しつけるのではなくて、温度を冷やすなど合理的な理由を説明することが異文化間の交流では必要です。人間の普遍性を理解して相手に納得してもらうことが大切です。
意見の違う相手を排除するのではなく、相手の背景を理解して納得のできる合意点を探りルールを決めていくことが、グローバル化の中で求められる。

 

教育への考察・教育委員会への報告で私は学校に逆恨みされた

◎私は、日本語ボランティアでR小学校に指導に行った。私のかかわっているM君が毎日けんかをしていた。彼は必ず忘れ物をして、他の子から黙っていろいろなものを借りていった。それでいつもけんかになった。大きなけんかがあった時に彼の親を呼んだが、「相手の子の親が来なければ会わない」と彼に伝えて私たちは会えなかった。国際教室のH先生も仲介をしなかった。H先生はM君を厳しくしかる。その場を治めるのはよいが、ストレスがたまるので問題を残す。H先生を組織で支援してあげられたら、この問題はここまで大きくならなかっただろう。
◎Rの会のボランティアの時間に事件や事故があったら学校は「ボランティアの責任」と言うだろう。「もしも事件が起きたら」というよりも「今日もけんかをしたが事件にはならなかった」という情況が続いた。私はHICEという浜松の外国人支援の組織に相談に行った。そこで「教育委員会の外国人を指導する課に行ってください」と言われ従った。教育委員会に行くことは考えていなかったが、これは客観的に見て教育委員会に報告する内容だと悟った。HICEはRの会を支援している団体だ。HICEの助言に従わずに事件が起きたらRの会は信頼を失うだろう。
◎教育委員会に行って経緯を話すと「よく報告してくれました」と言われた。担任の先生には「物を借りる時に『貸して下さい』と言うのは親の責任でしょ?」という話をした。先生の努力と考えられるが、何カ月かすると、M君は忘れ物が減り、忘れ物をした時に「貸して下さい」と言えるようになった。すると、けんかになることはなくなった。
◎テレビ局の方が、「Rの会を取材したい」と言ってきた。しかし、校長先生は拒絶した。もしもテレビに出られたら彼は自信を持てたかもしれない。だが、彼は授業中に歌を歌い、隣のクラスの子が「静かにしてほしい」と訴えるようになった。こういう時、怒るのではなく、「いい歌だね」と相手を受容するようなユーモアで切り返すと場がなごみ、結果的に静かになると思うのだが・・・。
◎三年後、教頭は私についてボランティアの方々に「あの人はいつ辞めるのですか?」と言った。私のかかわった子の中には浜松市の学力調査の国語で満点をとった子もいるのだが・・。学校はなぜ教育委員会に報告をしたことを恨んでいるのかを考えてみた。仕事が増えたこと、叱責されることなどだろう。私が望んでいることは報告書や会議ではない。責任問題でもない。ただ、問題の解決だけだ。

◎さかなくんは、「広い所にいる魚にいじめはないけれども、狭い所に閉じ込められるといじめを始める。いじめをするのは、広い世界を知らないから」と言った。私は先生にいじめられたけれども、この先生たちも広い世界を知らないのだろう。では私は広い世界を知っているのかと聞かれたら、お釈迦様の手のひらに「ここまで来たぞ孫悟空」と書いた西遊記の話と同じなのだろう。
◎問題は設定することで解決していく。問題を報告することは地位を脅かすのではなく、誉められるようにすべきだ。ある地域では地方版知恵袋があり、子供の恋の悩みをお年寄りが答えたりしている。問題が複雑になると学校だけでは解決できなくなる。NPOなどと連携をしてチームを組んで対応しなければならない。語学力、カウンセリング、犯罪者の矯正、いろいろな知恵を総合的に運用できればトラブルは解決できる。学校は学校、ボランティアはボランティアだと効率が悪い。学校は外部に助けを求めてもよい。
◎学校は責任の予防線を張るための書類作りもする。雑務が増えると本当に教育のための時間がなくなってしまう。こうしたことが普通の親をモンスターペアレンツに変えてしまう。また、学校には無駄な規則も多い。「ボランティアの人は学校の来賓下駄箱のいい場所は使えません。一番は教育委員会の偉い人が使います」こう取りきめるとみんなに同じことを言わなければならない。こういう無駄な規則が仕事を増やすのだ。
◎私が高校に将棋を教えに行く時、かなり丁重に扱われる。これは、私が偉いからではなく、先生がボランティアのパフォーマンスを上げるための行動なのだ。誉められるためにボランティアをしているわけではないが、無理解な環境では最高のパフォーマンスは生まれない。「どうしたら問題が解決するのか?」「いい教育が生まれるにはどうすべきか?」根本に戻って仕事に当たってほしい。

 

 

◎ひと手間かけるのと、意味の分からない規則の違い

 

小学校の掛け算の順番の問題を見ていると日本の教育のひどさの水準が分かる。数学的には答えはひとつでやり方は自由なはずだ。掛け算の順番を教えることで面倒な人間を増やす。つまらない規則を意味も分からず守らせようとする人間を見て腹を立てたことはないだろうか。日本の非効率化の一因だ。算数では、掛け算の順番よりも本質的に分かる能力の方が大切だ。「分数の割り算はなぜ分子と分母をひっくり返して掛けるのか」「三角形の面積の高さはなぜ底辺に直角の時なのか」小学生に直観的に理解させなければならない。もちろん、無駄に見えることの中にも意味のあることもある。小学校三年生の漢字のノートを見ていたら、先生が一ページに〇を十個くらいつけて、二つ訂正していた。小学校三年生だと、変な漢字を訂正させると非常に嫌がる。悪い漢字だけ訂正してあると嫌な顔をする。先生のいい漢字をほめることでやる気を出させているマメな努力は必ず報われると信じている。

 

自己有能感

 

「やればできる」という経験と信念をつくればいろいろな困難に立ち向かえる。才能は自分を信じ磨くもの。自分を信じられる体験、挑戦する体験をどんどんしなければならない。私は、専門の教育を受けていないけれども、自作の歌を歌う。クリエイティブサポートレッツの「スタタン」では片岡祐介賞。絵も最近描き始め知り合いに誘われて銀座のあかね画廊でグループ展に参加することになった。表現する姿、創作する姿を教える人が見せなければならない。私は「自分には才能があるのか」ではなく、「自分には才能がないのか」を問うようにしている。「あなたはアーティストになりたいのですか?」いいえ、私は村木多津男になりたいのです。